5,400円(税込)以上の購入で送料(700円)無料!

亀田製菓の公式通販店 亀田のあられ・おせんべい、人気のサラダホープも購入可能!

5,400円以上のご注文で送料無料

第5回 グルメ修行僧が探る心から美味しいと思えるナチュラルフード

「亀田製菓クラブ」会員様限定コンテンツ連載

ゲスト:寒川善夫氏(そうがわ よしお)日本一美味しい!と評判の梅干し
龍神梅製造 有限会社 龍神自然食品センター代表取締役


寒川さんが作る梅干し、その名も「龍神梅」は、和歌山県田辺市龍神村の豊かな自然環境の中、無農薬・無化学肥料で育てた梅を原料に食品添加物や化学調味料を一切使わず、手間暇かけて作られた昔ながらの梅干しです。日本一の呼び声が高い「龍神梅」の秘密や龍神村の農作物、自然に対する思い、農業の未来を担う若人たちへのエールなど、
ざっくばらんに話をお聞きしました。 

■「日本一の梅干し」と絶賛される「龍神梅」
■「龍神梅」はどうやって作られるのか?
■本物の「梅干し」に秘められた力
■世界中に広がる「龍神梅」
■農業を未来に繋ぐために

(記事の一番最後に龍神梅プレゼント応募フォームがあります)

■「日本一の梅干し」と絶賛される「龍神梅」

-遠州流家元付き料理人や料理研究家・辰巳芳子さんが絶賛する梅干しとは?

青江)日本一の梅干しとして名高い「龍神梅」。料理界でも多くの方が絶賛されていますね?

寒川)ありがとうございます。東京・神楽坂 懐石小室の小室光博さんとはもう十数年くらいのおつきあいになります。それまで小室さんが使われていた梅干しを作っていたおばあちゃんが高齢になって、その梅干しを作ることができなくなってしまったそうで、僕のところにお電話をいただいたのです。

うちは親父の代から無農薬・無化学肥料で梅干しを作ってきましたが、僕の代になって味の安定性などにもこだわり、本気で梅干し作りに取組み始めた時期でした。

小室さんは、茶道の遠州流家元付き料理人を務めていらっしゃいます。遠州流は、江戸初期の大名茶人・小堀遠州を流祖とする、440年余りの歴史を持つ流派です。その小室さんが、少し恥ずかしいんですけれども、「龍神梅は日本一の梅干しだ」と紹介して下さいました。そうしたこともあるのでしょうか、関東の有名な料理屋さんで「龍神梅」を使っていただくようになりました。人口やお店の数が多いのかもしれませんが、関西よりも取引先が多いのです。関東の料理人さんに受けがいいですね。

 

青江)「いのちのスープ」で知られる料理研究家の辰巳芳子さんも「龍神梅」のファンで、ウェブサイト「辰巳芳子の薦める味」や辰巳芳子さんが最高顧問を務める「確かな味を造る会」でも、「龍神梅」が紹介されています。

辰巳先生は、レシピの中で「龍神梅」をどのように使われているのですか?

寒川)玄米スープなどに使われています。玄米を梅干しと昆布で煮出した玄米スープは究極の養生スープと言われていますが、辰巳先生のお弟子さんの料理人の方は、「龍神梅」を使わないとスープの味が締まらない、辰巳先生の味にならないと言って下さっています。「龍神梅」は酸味がしっかりしているのが特長なのです。

■「龍神梅」はどうやって作られるのか?

-青梅を枝から収穫することで、十分な酸味を保つ

青江)「龍神梅」は、昔ながらの酸っぱくてしょっぱい梅干しです。しかし、何とも言えない滋味があって、しみじみ美味しい。「龍神梅」をいただく度に新たな発見があるといいますか、自然の力を感じます。どのように作られているのですか?

寒川)梅干しの作り方を簡単に説明しますとまず、梅に塩をしてしばらく置きます。すると、梅から出る水分=梅酢が上がってくる。そこにアク抜きした紫蘇を入れ少し置いた後、梅を天日に干して保存します。

龍神梅の梅は苗のときから一度も消毒していませんし、農薬や化学肥料は一切与えず、モミガワや木の皮など昔ながらの堆肥を与えるだけです。自然のままですから隔年結果を起こし、2年に1度は不作となり収量は安定しません。それでも自然の恵みを受け、しっかりとした梅が育ちます。青梅の産毛が少し取れて、若干色づき始めた頃を見計らって、枝から手で梅の実をもぎ、収穫します。最近の梅干しは完熟の梅を使うことが多くなってきていますが、本来梅干しは青梅を使うのです。

青江)梅干しには青梅のほうがいいのですか? 

寒川)はい。青梅にはクエン酸が多く含まれていて、このクエン酸が体内に入るとアルカリ性に変わるのです。梅干しがアルカリ性の健康食品と呼ばれる由来はここにあります。だからこそ、梅干しは酸っぱいものなんです。また、クエン酸などが多く含まれる梅酢が自然の殺菌剤となって、梅をカビや雑菌から守ってくれるのです。

青江)確かに、子供の頃に食べた梅干しは酸っぱかったです。

寒川)収穫した梅を汚れや斑点を取り除くために漂白剤で洗浄するところも多いのですが、うちはそうした漂白洗浄を行いません。漂白剤が梅に浸透したり、健康成分が流れ出たりするからです。ですからうちの梅には黒い斑点がついていることもあります。

また、最近では塩漬けした梅に脱塩加工し、食品添加物や甘味料を添加する加工梅が出回っていますが、こうした加工も梅のクエン酸などが損なわれるので一切行いません。

 

青江)「はちみつ味」や「かつお味」などの味がついていて、酸味や塩分が強くない梅干しが最近増えていますよね。 

寒川)南高梅の出現によって、梅干し自体が「食べやすい」方向に加速したように思います。南高梅自体は果肉が厚くて皮が薄い、いい梅です。南高梅の産地として有名な和歌山のみなべ町などでは梅を収穫する際、完熟して落ちてくる梅をネットで受けて拾う方法を採っています。そういう収穫方法は40年ほど前に始まったと記憶していますが、梅を完熟させると酸味がなくなって糖度が上がります。糖度が高くて酸味が少ない梅を使うと、どうしてもカビが来やすくなる。そこでカビを抑えるために20%ぐらいの塩を使うことになります。でも、20%も塩を使うと塩辛くなってしまうので、脱塩=塩抜きしてから改めてはつみつやだしで調味するのです。ちなみにうちの梅干しの塩の量は12%ぐらいです。

-塩は梅酢が早く上がる沖縄のシママース

青江)寒川さんは、どんな塩を使って梅干しを漬けているのですか?

寒川)沖縄の塩・シママースを使っています。シママースを使うと、梅酢が上がるのが早いんです。先ほどもお話したように、うちの梅干しを漬けるときに使う塩の量は12%でかなり少ない。つまり、カビが来やすいんです。でも、梅酢が早く上がって梅を覆ってしまえば、空気に触れる時間が少なくなるのでカビが来づらくなる。シママースは他の塩に比べて結晶の表面積が広いので梅と馴染みやすく、塩が早く溶け、梅酢が早く上がるのです。うちが使っているシママースは、オーストラリア産の輸入天日塩を沖縄の海水で完全に溶解した後に、平釜で再結晶化させる方法で製造した純国産ではない塩を使っています。 純国産の塩よりも若干コストが安くて、そのあたりも使いやすい理由ですね。

青江)酸っぱくてしょっぱい梅干しが少なくなって、昔ながらの梅干しが好きな方は自分で梅干しを漬けているのではないでしょうか。私も毎年梅干しを漬けていますが、梅干し作りは難しいですね。

寒川)作り方自体はとても単純なんですが、だからこそ奥が深くて。そこが梅干し作りの面白くもあり、難しいところでもあります。

紫蘇は古来からの在来種を種から自家栽培

青江)梅干しに使う紫蘇も、寒川さんのところで作られていますよね?

寒川)紫蘇は全て自社で作っています。紫蘇は虫にとても弱いので、無農薬での生産は本当に大変なんですよ。

紫蘇は連作障害がないと言われますが、僕に言わせればそうではない。1年目は虫がつかずに育ちますが、2年目からはどういうわけか虫が大量発生します。本当に育てるのが難しい作物です。
龍神村でずっと作られ続けてきた在来種の紫蘇の種を蒔いて紫蘇を育てています。梅干しを漬けるために摘んだ後の紫蘇に種ができたら刈り取り、風通しのいいところに干して保存、この種を次の年に蒔くというサイクルを続けています。この紫蘇の種がなくなってしまったら、龍神村の紫蘇がなくなってしまうのです。 



撮影:さくらいしょうこ

■本物の「梅干し」に秘められた力 

青江)そもそも日本食と梅干しは切っても切れない関係で、梅干しこそが日本食の基本にあると思うのですが?

寒川)昔の食卓には梅干しが入った壺が真ん中にどん、と置かれていて、古くから日本人は日常的に梅干しを食べていましたよね。梅干しを見ると反射的に唾液が出ますが、唾液が出ることで胃を刺激し、食事をした際の胃腸への負担が減るらしいです。日本人は梅干しを見るだけでそんな風に身体のスイッチが入るらしく、そういう点からも梅干しを食べることは理にかなっていると思います。

僕らは真夏の炎天下、農作業を行って大量の汗をかきますが、うちの梅干しを5個くらい食べて水を飲んだら、午後からは何もなかったように働くことができる。そのぐらい梅干しには身体を回復させる力があるのです。アスリートでも身体を限界まで追い込む方はうちの梅を食べてくださっていると聞いています。

青江)平安時代に記された日本最古の医学書『医心方』に、「梅は三毒=食事の毒、水の毒、血液の毒を断つ」という言葉が出てきます。「梅はその日の難逃れ」ということわざもありますね。

寒川)梅干しは本当にすごくて、食欲増進・消化促進、虫歯予防、食中毒予防をはじめ、体調管理や生活習慣病の予防などにもいいと言われています。うちの妻は子供のお弁当に梅干しを必ず入れますが、本当に食品が酸化しない。強力な殺菌力を持っています。

先人の知恵が詰まった昔ながらのやり方で丁寧に作られた梅干しは、人間の身体に大事なもの、必要なものだと思います。でも、それを勝手にアレンジして、例えば蜂蜜などを入れて甘くして食べやすくしてしまったら、それはもう本来の梅干しではないと思うんです。今、売っている梅干しのパッケージに「クエン酸」と表示されているものを見かけますが、このクエン酸は本来梅に含まれているクエン酸ではなく、あとから添加されたものなのです。

完熟して甘味が増えた梅は青梅に比べてクエン酸含有量が少ない。だから、漬けるときにカビが来ないように塩を多くして漬けて、その後塩抜きをして、味を付け直す。塩を抜く工程で、梅の大事な成分であるクエン酸も抜けてしまう。そんな本末転倒な梅干しは、本来の梅干しが持つ力を失っていると思います。

僕は、本物の梅干しを作って皆さんに提供したい。昔ながらのやり方で本物を作っていくことが、龍神村の、日本の農業を未来に繋いでいくことになると思うのです。

 

■世界中に広がる「龍神梅」

青江)「龍神梅」は、海外からの引き合いも多いのですか?

寒川)僕らはマクロビオティックの方に食べてもらうために「龍神梅」を作っているのではないですが、結果としてそういう方が、特に海外のお客様には多いです。取引先のひとつであるイギリスのマクロビオティック関連の輸出会社は、世界44カ所ぐらいに「龍神梅」を出荷しているそうです。その社長に、イギリスの人々が「龍神梅」をペースト状にしたものをどうやって食べているか聞いてみたところ、一番多いのはパンにそのまま塗って食べていると。僕は衝撃を受けました。そんな食べ方をしてパンに合うのかなって。世界は広いです(笑)。

青江)世界中で愛されている「龍神梅」、これからの展望について教えて下さい。

寒川)今のところ、製造量が増やせないのが問題ですね。紫蘇作りにしても手間暇かかるし…。梅を作っている高齢の方がどんどん引退されていますから、そこは何とかしていかなければならないですね。

僕が会社を引き継いだ頃のお客様は、ほとんどが高齢の方でした。しょっぱい、昔ながらの梅干しを若い人たちは食べなくなっていたのです。それを何とかしたいと思って、料理屋さんに食べてもらう、使ってもらうことから始めました。現在、ネットショップの売上は30代、40代の主婦が圧倒的です。若い世代が「酸っぱくてしょっぱいのが本当の梅干しだ」と分かってくれて、「龍神梅」を選んでくれている。本物の食品、日本の昔ながらの食品に興味を持ってくれていることが嬉しいですね。

 

■龍神村で生み出される美味しいもの

青江)「龍神梅」の美味しさの秘密には、龍神村の自然環境も大いに関係していると思います。日本全国探しても寒川さんのところほど環境のいいところって、そうはないですよね?

寒川)龍神村は本当に水が綺麗なところです。うちは谷から水を引いていますが、そこから奥に民家がないので、そういう意味では水もすごくいいです。

青江)梅以外の作物も自然農法で作られていて、米やタケノコ、キノコ類やユズなどの自然農法についてウェブサイトで紹介されていますね?

寒川)はい。じゃがいもやたまねぎ、レタスや白菜なども作っています。米は除草が大変なので、愛媛大学の名誉教授が考案した布マルチ=籾だねを一列に蒔いた布を、ローラーのように田んぼに敷くという農法で作っています。この方法だと、イネは布を突き破って成長しますが、雑草は生えてこないんです。

青江)古いやり方を踏襲するだけではなく、現代の理にかなった農法を取り入れているところも寒川さんの素晴らしいバランス感覚だと思います。椎茸やタケノコもものすごく美味しくて、寒川さんの椎茸なら、椎茸が嫌いな人でも食べられる、むしろ椎茸が好きになるのではないかと思うほど美味しいです。

寒川)実は僕も椎茸が苦手なんですが、うちのは食べられます。美味しいですね(笑)。

お褒めいただいたタケノコですが、同じ龍神村のタケノコと比べてもうちのタケノコは白っぽいのです。粘土質の土に植わっていて、周りとは土の質が違うからでしょうか。でも、粘土質の土は上の方が堅くて、掘り出すのが大変で。僕でも朝から4本掘るのが限界です。

タケノコは根をつけた状態で周りの土もついたままで掘り出して、近くの谷川水で濡らした新聞紙で撒いて、発送します。するとアクの廻りが遅くなるんです。

青江)タケノコが土から抜かれたことに気づかれないように、土をつけたままで送って下さるからでしょうか。生のタケノコをお刺身でいただいても、全くアクがなくて絶品です。 

寒川)ありがとうございます。今年はレタス、白菜も日本の在来種、遺伝子組み換えをしていない種を使いました。これからは遺伝子組み換えの種を使わずに全て、日本古来の在来種に切り替えていこうと思っています。

青江)長い間、その土地で育ってきた作物は、その土地で最適に育つようになっているはずです。地域に合った作物を残していくのは、とても大切なことだと思います。

■農業を未来に繋ぐために

-農業で生活できるようにならなければいけない

青江)農業の未来について、寒川さんはどのように考えていらっしゃいますか?

寒川)農業で生活ができるようにならないといけないと考えています。僕のところも「農業が好き。農業がやりたい」という若い人が増えてきました。農業は食べものを作り出すのですから、命を預かる、とても大切な価値ある仕事だと思います。国家レベルで言えば国の食糧自給率を高めることにもつながります。だからこそ、若い子に農業をやってほしいし、もっともっと理解してほしい。そのためには農作物や商品がしっかりした価格で売れないとダメです。いいものを作ると値段も高くなるのです。

紫蘇を例に取りましょう。普通の紫蘇だったら、化学肥料をやって農薬を撒けば、1シーズンで紫蘇の葉っぱを12回収穫することができます。でもうちの紫蘇は、1シーズンで4回摘めたらいいところで、1回あたり摘むことができる量も4分の1程度です。単位面積あたりだと普通のやり方の30分の1くらいになると思います。生産性は悪いけれども品質は最高です。

実際にうちの畑で紫蘇を作っているところを見ていただいたら、それなりの価格になることを理解してもらえるのですが、なかなかそこが伝わらない。だからこそ、なぜそういう価格になるのかしっかりお伝えして、お客様に買っていただく。農業で生活がきちんと成り立つようにしていかないといけないのです。

 

-龍神自然食品センターの未来を担う若者たち

 

青江)龍神自然食品センターでは若手社員が活躍していますね?

寒川)一人は、龍神村出身の24歳の女性です。彼女の父親は畜産業だったのですが、経営が厳しくなって辞めてしまいました。でも彼女は農業が好きで、農業をやりたいということでうちに就職したのです。今は「楽しくてしょうがない」そうです。まだ結婚はしていないのですが、同じ学校を出た彼氏を連れてきて、その彼氏も最近うちに就職しました。

もうひとりは25歳の男性。高校卒業後どこにも勤めたことがなく、おばあちゃんの農業を手伝っていて、ホームページを見て直接訪ねてきてくれました。彼は、「今までの僕はニートで引きこもりみたいだった。僕が変っているせいなのか、全く周りの人に理解されず、社会からずれている感じがあったけれども、ここでは全くそういう感じがない。楽しいし、自由や」と言うんです。

彼は農業の知識が豊富なので、在来種の種の大事さなどもよくわかっています。今、彼が在来種のレタスを作っているのですが、「余った畑、好きに使え」といったら、日曜日の朝早くからレタスを見に畑へ来たりと、本当に農業が好きみたいなんです。


撮影:さくらいしょうこ

もう一人、車の営業をやっていて、うちの営業担当で、うちの社員旅行に一緒に行ったりしていたのですが、ある日「うちで働きたい」と。彼には「給料が下がるよ」と言ったのですが、「最初はただでもいいです」と。でも入社当時はプライドが高くて、全然通用しなかった。「自分は変りたいけれどもどうしたらいいかわからん」と相談されたので、「他の人の下について、プライドを捨てるところから。タケノコを掘るところから始めたら」とアドバイスしましたね。タケノコを掘るのって、本当に辛抱と根性がいるんですよ。今はZoom会議のセッティングなどは彼がさっとやってくれますし、うちになくてはならない人になってくれました。

若い子が増えると会社が活気づきます。僕は「今日も仕事や」と思ってげんなりするようなことがない会社を作りたかったので、若い子が楽しそうに働いているのを見ると、心から嬉しいですね。

 

■龍神の山もまた、未来に残すべき宝

青江)寒川さんは林業、そして木工品や家具などの製造販売も行われていますね?

寒川)4年ほど前にエムトゥアールという会社を作って、山林の管理から伐採した木を製品にするところまでやっています。親父が手入れしていた山を、林業を何とかしたいと思って始めました。というのも、山が今、どんどん放棄されているのです。親が林業をやっていても息子さんが都会で勤めていたりすると、山を手入れすることができない。すると、知らないうちに山がたたき売られたり、名義が変わっていたりするのです。今は、外国の人も山を買うので、本当に怖いです。そして、手入れしていない山は災害が起こりやすくなる。間伐して光を森に入れてやらないと、木の根がしっかり張らなくて土砂崩れが起きる原因となります。昔と違って雨の降り方も変ってきましたから、これまで以上に山林の手入れは大事なんです。

僕がやっているような手間暇かかる山林の手入れを行う事業者が少なくなる一方、木を一斉に切って山を丸裸にして放置するような伐採を行う事業者も増えています。でも、そんなことをしていたら山がダメになる。山がダメになったら、龍神村がダメになる。農業もダメになるでしょう。先祖代々伝えられてきた「昔ながらのやり方」の中に本物があって、それを大事に伝えて、残していかなければならない。そして、龍神村の「本物」を一人でも多くの人に分かってもらいたい。そういう活動をこれからも続けていきたいですね。

 


インタビューを終えて

「日本一」。言葉にすると本当にシンプルですし、気軽に出てくる言葉です。ただ、この言葉の対象になるのは本当に「ただひとつのもの」です。私も何度か龍神村に足を運んでいますが、まず感じるのが「美しい」ということです。空気は澄み水は清らかだという自然の美しさは言うに及ばず、その上食品を扱う場所は清潔で、あるべきものがあるべきところにきちっと整理整頓されている。まさに機能的な美しさを体現しているような場所だなといつも思っています。
その様子を見ると、寒川さんのおっしゃっていた「作り方自体はとても単純なんですが、だからこそ奥が深くて。そこが梅干し作りの面白くもあり、難しいところでもあります」という言葉が実に実体をもって感じられるのです。何事も当たり前のことを当たり前にやる。言うのは簡単ですが、妥協を許さずそれを突き詰めることがいかに大変かを知っている人の言葉には重みがあるのですね。豊かな自然の恵みと、実直な手作業の積み重ねによって生み出される龍神梅は、まさに「日本一の梅」なのです。

 

今回のゲスト:有限会社 龍神自然食品センター代表取締役・寒川善夫(そうがわ よしお)氏

有限会社 龍神自然食品センター代表取締役。
和歌山県田辺市龍神村で昔ながらの無農薬・自然農法にこだわり、
梅や紫蘇を自家栽培。梅干や梅エキス、梅酒などの梅製品を製造・販売している。「本物の梅干し」を多くの人に知ってほしいという思いから、梅本来の酸味を活かした「龍神梅」というブランドを打ち出し、著名な料理人を始め、多くの人から「日本一の梅干し」と絶賛される。祖父の代から続く林業も手がけ、代表を務めるエムトゥ-アール株式会社では、店舗の内装や木工品や家具などの製造・販売も行う。和歌山の梅や農作物、山、そして自然を未来へ繋いでいくことをミッションとしている。

 

モデレーター:緑泉寺住職 青江覚峰氏 プロフィール

 

1977年東京生まれ。浄土真宗東本願寺派湯島山緑泉寺住職。米国カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。「暗闇ご飯」主宰。超宗派の僧侶によるウェブサイト「彼岸寺」創設メンバー。著書に『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ほとけごはん』(中公新書ラクレ)、『お寺のおいしい精進ごはん』(宝島社)など。海外での精進料理公演などの実績も多く、国内外のテレビラジオ、Webなどで引っ張りだこの日本精進料理界の若手僧侶。

 

何を探していますか?

カート

x