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第4回 グルメ修行僧が探る心から美味しいと思えるナチュラルフード

「亀田製菓クラブ」会員様限定コンテンツ連載

ゲスト:レストラン 「No Code」(東京・西麻布)オーナーシェフ 米澤文雄 氏

今回は『ヴィーガン・レシピ』の著者で、今もっとも注目を集める若手シェフの一人、米澤文雄さん。
米澤さんは2002年に単身渡米。NYの三つ星レストランで、日本人初のスー・シェフ(副料理長)に就任。帰国後はシェフとして腕を振るいながら飲食業の新たな未来を創造するため、商品開発やコンサルティングなど幅広い活動を行われています。今年7月には完全紹介制レストラン「No Code」を西麻布にオープン、
予約が取れないレストランとしても話題沸騰中です。

■米澤シェフの表現する世界
ヴィーガン料理と精進料理の違い
日本でヴィーガン料理はメジャーになるか
植物生まれのベースミートやソイミートの未来
米澤シェフが見つめる未来

米澤さんの店作りにかける思い、ヴィーガン料理と世界の食糧問題など、幅広い視点で「食の未来」について語っていただきました。

 

レストラン「No Code」でシェフ・米澤文雄が表現する世界とは

22年7月に初のオーナーレストラン 「No Code」をオープン

青江)「No Code」のオープン、遅ればせながらおめでとうございます。コロナ禍でもあるこのタイミングで、なぜオープンを決意されたのですか?

米澤)収益的な事業性だけを考えると、コンサルティングのお仕事などもいただいて困ってはいなかったのですが、シェフとして今後生きていく中で自分の料理を作る場所がないのはよくない、お客様との風景性としてレストランを持っていないと成立しないという考えがありました。

料理をアウトプットする場としてレストランの営業を週に34回、それ以外の時間にはコンサルティングや商品開発、地方でのお仕事を入れるとバランスがいいかなと。収益をしっかり得られるようになったからこその贅沢な時間の使い方ではあるのですが、今のところよかったなと思います。若干大変ですけど。

カウンター8席、対面のお店なので、お客様とやり取りしながら自分の料理をしっかり食べていただくことができますね。料理だけではなく、僕が表現したいものが表現できているので、現状としてはすごく満足しています。

 

自分が訪れたいお店、それが常に答えになる

青江)米澤さんが表現したいものとは何でしょう?

米)そうですね。例えば、若い料理人は自分が学んできたものの最大公約数を自分の中に作り、それをお客様に提案します。自分の技術やアイデアを披露することに集中すると思うんです。僕はこんなに学んできて、こんなことができるんですと。どちらかというと、お店は見せる場、プレゼンする場所です。

でも、僕が考えるお店の「正解」とは、エンドユーザーが常に僕であるし、自分が食べたい料理や自分が訪れたい店を作ること。それが常に「答え」となっています。42歳という年齢の僕が、年収や自分の周りの環境を考えて、こういうお店に行ってこういうものを食べられたら嬉しいと思う、それが僕が考えるレストランの正解なんです。そこが今、すごくできていると思います。

7~8年ぐらい前からカウンターのフレンチなどのお店で、締めにカレーを出すようになりました。何故そんなことをやったのかと考えると、多分そこのシェフは、自分がお客として店に来たとき、締めにカレーを食べられたらいいなと思ったのではないかと想像するんです。これまでのセオリーだとフランス料理の締めにカレーなんてあり得ない。もちろんシェフが、フランス料理の継承を目的とするエスコフィエ協会の会員だったりしたらそういうことはしないと思いますが、そうでなければ、自分がお客としてお店に行った場合、どういうものが嬉しいかと考える中に答えがあると思っています。

料理に関するセオリーはもはやあってない、料理は難しければいいとも思わないし、クリエイティブであればいいとも思わない。僕だったら、これぐらいのところに行って、これぐらいの金額でこういう体験ができたら嬉しい。ワインだったら、この価格でこれぐらいの銘柄のワインを楽しみたい。場所や雰囲気はこうで、こういう人たちに来て欲しい。そんな思いを詰め込んだのが今のお店なので、割と何でもありです。

米澤ワールドの野菜料理の数々

青江)SNSでは、9種類の野菜料理が美しく盛り付けられた料理の写真を沢山お見かけします。私はあの一皿をいただきたくてしょうがないんです(笑)

米澤)ヴィーガンボックスといって、野菜を使った9種類の料理を、9つのマスに区切ってお出ししています。僕はヴィーガン・レシピの本を出していることもあり、お客様がそういうものを熱望されていましたので。

青江)あれ、すごいですよね。和食で言うところの八寸みたいです。

米澤)盛り合わせたものって、蓋を開けたときにお客様にも喜んでもらえますし、一つひとつの料理は一口二口で召し上がれるのですが、それでも十分世界観を演出できますね。

青江)野菜は色も綺麗だし、旬もあるのでむしろ世界観は作りやすいと思います。その反面、肉や魚に比べてやはり旨味やコクが少ない。野菜を美味しく料理するためにどのようなところに気をつけていますか?

米澤)それぞれの素材にあわせて、甘いのか酸っぱいのか、辛いのか…。味のバランスを整えることでしょうか。

青江)そういえばヴィーガンレシピの本にも、苦みを加えるために焼くとか、酸味を加えるといったことを書かれていましたね。「No Code」のお料理、他にはどんな一品がオススメですか?

米澤)今出しているコースですと、ケールの葉っぱをタコス仕立てにした「ケールのタコス」が人気です。ケールは癖の強い野菜の一つで、口に入れたときにはケールの風味が広がりますが、中に具を入れるといい感じにまとまるんです。ケールをセルクルで丸く抜いて、そこにイワシのマリネと自家製のブレザオラ(塩漬けした牛肉の生ハム)とロメスコソース、スパイスをはさんでお出しします。
あとはトリュフと卵黄のエクレア。卵に1時間くらい低温で火を入れて温泉卵より少し固めの卵黄を作り、その卵黄とバターに結構強めの塩を効かせた上に、今の季節はサマートリュフを乗せていますね。それは皆さんお好きですね。美味しいです(笑)。
アラカルトで人気なのは、ジェノベーゼ。ジェノベーゼはお客様が来られてから、おもむろにバジルをむしり始めてジェノベーゼのソースを作るのでフレッシュです。できたてのジェノベーゼってなかなか味わえないので、喜ばれています。

■ヴィーガン料理と精進料理の違いは?

青江)日本でヴィーガン料理を紹介する場合、精進料理と比較されることも多いかと思いますが、精進料理とヴィーガン料理の違いについて、米澤さんはどのようにお考えですか?

米澤)動物性のものを使わない=ヴィーガン料理になります。それ以外にヴィーガン料理では食材の縛りがありませんが、精進料理の場合はもう少し思想的なものが入ってくると思いますね。全てのものを使い切るとか、タマネギやネギといった野菜は使わないとか…。

青江)煩悩への刺激を与えると言われている五種類の野菜=ニンニク・タマネギ・ネギ・ニラ・ラッキョウは五葷(ごくん)と言って、精進料理では避けるべきと考えられています。

米澤)僕の中で五葷を使わない料理はハードルが高くて…。そのあたりの考え方は違うなと思いましたね。あと、それほど油分も使いませんね。

青江)そうなんです。五葷を使わない料理は、すごくハードルが高いんですよ。

■日本でヴィーガン料理はメジャーになるのか?

食生活を見直す時期に来ていることは間違いない

青江)10年ぐらい前ですが、真面目にお坊さんをやろうと思って、肉とお酒を断っていた時期があるんです。やってみると本当に大変でした。まず外食ができなくなります。当時、肉とお酒を摂らないように外食をしようと思ったらインド料理しかありませんでした。インド・パキスタン系のカレー屋のダルカレー=豆のカレーだとビーガン対応が可能ですが、それ以外はほとんど無理。その結果、お前と行ってもお酒も飲めないし、カレー屋ばっかりで飽きたと言われて、友達がほとんどいなくなった(笑)。

でも、米澤さんのような人が出てこられて、ようやくヴィーガン料理がメジャーになりつつありますよね?

米澤)時代の流れもあると思います。人口増加や地球温暖化による世界的な食糧不足はこれからもっと進むでしょうし、魚も今後、あまり獲れなくなるでしょう。「牛肉なんか食べていたら地球がなくなるよ」といったコンテンツがNetflixで世界中で見られるようになり、それに感化された人々が牛肉を食べなくなっている。僕の周りでもそういう人たちが増えていますが、僕自身は、全ての食材をバランスよく食べるべきだと思ってます。

今、私たちが外食のとき食べているのは、基本的にハレの日の食事なんです。昔のハレの日の食事と言えば、誰かの誕生日や結婚記念日などのお祝いの席でいただく豪華な会食でした。でも、それぐらい豪華な食事を週に3度も4度も食べていたら、それは身体にも悪いし、食材も枯渇してしまいます。人間は、今ほど精製されたものを食べていませんでしたし、脂質も糖分も昔の人は今ほど摂っていなかった。どう考えても、今の食生活は身体によくないですよ。

 

世界の流れから遅れる日本

米澤)日本は世界の流れに比べると遅いと思います。諸外国、例えば欧米を例にとると、社会的に地位のある人やお金を持っている人たちが率先して環境・食糧問題に取り組んでいます。エコ認証を取っている魚を買ったり、フレキシヴィーガンになったりと、ハリウッドスターがそういう食生活をするのを見てファンがそれに倣うように、多くの人たちがどんどんやり始めます。

日本の場合、ヴィーガンやプラントベースの食事、ベジミートのような環境に配慮した食材に興味を持つ人、活動を一生懸命行う人たちは、普通の方ですよね。社会的なポジションの高い方や富裕層の方は海外のそういう層の方と比較すると意識が低いように感じます。日本ではお金を持っている人たちのほうが、肉もマグロもガンガン食べるじゃないですか。正直、世界の状況をあまり見ていなくて、欧米とはそういった構図が全然違うんです。

それともうひとつ。日本は食べものが美味しすぎるんですよ。自分の周りの環境を気にするより「美味しいものを食べたい」という己の欲望が勝つ、みたいなところがある。それが日本人の感覚なのかなと思います。

青江)ものが美味しすぎる国、環境などへの気遣いが遅れている国、日本。その視点は僕にはなかったですね。

米澤)外国の食べものって、日本に比べるとそれほど美味しくないです。食べものとしての素材は圧倒的に日本のほうがいいです。その一方で、良薬は口に苦しと言いますが、身体にいいものはあまり美味しくない。身体によくなくて地球環境に悪いものほど、なぜかうまいんですよね(笑)。

■植物生まれのベースミートやソイミートの未来とは?

植物生まれのミートが定着するには?

青江)こうした世界的な流れを受けて、亀田製菓では植物生まれのベースミートやソイミートなど、代替肉の開発にも力を入れています。米澤さんも使っていらっしゃるのではないですか?

米澤)代替肉は、商品開発のような場面では使いますが、自分のレストランではまだそれほど使ってはいないですね。やはり、まだナチュラルではないんですよ。大豆やエンドウ豆から作り出される代替肉より、野菜を仕入れて野菜を使う方がナチュラルな感覚がある。もっとも、最近はかなり美味しくなってきましたね。

あとは価格の問題です。まだ動物性の肉のほうが安く買うことができます。鶏肉やひき肉を買ったほうが安いじゃんって思ってしまいます。

SDGsの設定目標は2030年と決められていて、各国そして企業もそこに向けて頑張りましょうとなっている。日本政府としても今後さらにスピード感を持ってやっていかないといけなくなるのは事実だと思います。そうなると、ソイミートなどを安く作ることができるように開発企業に対する特別処置が施されたり、あるいは動物性の肉を扱う企業に課税をするなどの方針を政府が打ち出すでしょう。そうして、価格が安くて美味しいソイミートが作られて認知された時点で、大きくシフトしていくのかなと。そうなると需要が増え、PRやマーケティングの予算も増え、目につく機会も多くなると必然的に興味も増す。そのころにはもっとソイミートのクオリティが上がって、「ソイミートを食べたらおいしい!」と多くの人が思うようになったあたりから、大きな流れが生まれると想像しています。


《ベジミートを使った料理例》

日本人の意識が変わるには

青江)先ほど、社会的地位のある方たちが変わらないといけない、という話がありましたが、日本人である私たちの意識を変えることはできるのでしょうか?

米澤)できると思います。昔、テレビで「パプリカがいい」と言うと店頭からパプリカが消えた、そういう話だと思います。

以前、私が働いていた「The Burn」というレストランで、経産牛=出産した後の雌牛に穀物中心の餌を与え、肉牛として出荷される牛を林修先生のテレビ番組で取り上げてもらいました。そのとき僕も出演して、経産牛を使う理由や経緯を説明させてもらいました。経産牛は赤身にすごく味が乗っていて、美味しいんです。番組はコロナが流行する直前くらいに放送されましたが、それを見たお客様が大挙してお店に来られました。やはりテレビの影響は一定数ありますね。それは単発で終わりますがリピートしていくうちに、一定数のファンがつくのは事実としてあると思います。

 

■シェフ・米澤文雄が見つめる未来

青江)米沢さんはこれまで様々なチャレンジを重ねてこられたわけですが、何がそこまで米沢さんを突き動かすのですか?

米澤)興味、ですね。実際、僕は何もあまり考えていないんですよ(笑)。

人生って選択の連続だと思うんです。その選択が正しかったかどうかは、未来から過去を見ないとわからないけれども、僕は頑固なので、自分の選択を肯定したいんですよね。選択をしたら、それが正しいと思えるように頑張る。なんでこっちを選んだんだろうと悩むのではなく、選んだほうを肯定する。それがぼくの考え方で、その選択の積み重ねがいい感じにつながってきたと思います。

青江)めちゃめちゃポジティブですね。

米澤)そうです。僕、単純なんです。

青江)そういう話のとき、すごくいい笑顔で話されますよね。米澤さんのそこが最高だと思っていて、とても魅力的です。
さて、これからはどんなことにフォーカスしていきたいですか?

米澤)お店をオープンしたばかりなので、今はお店のことが一番ですが、将来的には海外、特にアジアを視野に入れていきたい。北米は自分がいたところなので夢はありますが、いろんなものがもう成熟してしまっている。これからはアジアの可能性が益々高くなると思います。一生懸命頑張っている人の数も多そうで、そういう人たちとご一緒できるとすごく面白いんじゃないかなって。これからは日本にフォーカスしても厳しい。人口が少なくなって市場規模が縮小していくのが一番の要因です。円の価値も下がっているので外貨を稼いでいかないといけないですよね。

思いは言わないと叶っていかないので、結構口にするようにしています。例えばアジアでのプロジェクトがあったときに、そういえばこないだ僕がアジアに興味あるって言っていた事を誰かが覚えてくれていて、声がかかるかもしれない。僕はそうやってここまでやってきた人間なんです。口にするとそれに近い仕事が降りてきて、そこで結果を出すよう頑張る。そうすると、次に進んでいくんです。

青江)最後に、米澤さんにとって料理とは何ですか?

米澤)もちろん仕事でもありますし…。僕はずっと「食の場は楽しい」と思ってやってきていて、料理は楽しい場のお手伝いをする最大のコンテンツです。古代中世の時代から食事の場で人間はいろんな話をしたでしょうし、現代でもデートと言えば食事に行きます。難しい話をするときも懐かしい友人と会うときも食事をします。いい空間といい食事、いいお酒があるとその空間がとても楽しいものになる。僕の料理が主役じゃなくていいんです。むしろ、料理はスーパー脇役でいいと思っていて、その会が楽しかったと思ってもらえるのが目指すゴールです。でも、そのゴールが達成できたときには、「今日の食事は美味しかったね」と必ず僕が作った料理が話題に上る。そういうのが一番嬉しいですね。

青江)米澤さんの料理は、力が入りすぎていないんですよね。「これを見て」というのがなくて、押しつけがましくない。どこか力が抜けていて、それでいて美しくて美味しい。私も是非見習いたいと思います。米澤さん、ありがとうございました。近いうちに、必ず食べに行きますね(笑)。

米澤)是非!お待ちしています。

(米澤文雄さんへのインタビューを終えて)

スペシャリストとは特定分野を専門にし、その分野に深い専門知識を持つ人のことを指しますが、まさに米澤さんは料理のスペシャリストです。

第一線で働くからスペシャリスト、技術が優れているというわけだけではなく、自分にできることを第一線で、かつ高い水準で行った上で、

その業界で業界で今何が起こっているのか、なにが足りていないのか、求められているのかそこをしっかりと見極める。その上で、自分が今これをやりたい! 

という意欲を持っている。これらがすべてうまく噛み合わさることは、そうそうあることではありません。それを体現しているからこそのスペシャリストであり、

その言葉はかくも重く心に響くものだと感じたお話でした。

 

今回のゲスト:[No Code]オーナーシェフ 米澤文雄氏

撮影:Mio Hasegawa

1980年、東京都生まれ。株式会社No Code代表。高校卒業後、恵比寿のレストラン「Il  Boccalone」で4年間修業したのち、2002年単身渡米。ミシュラン三ツ星常連の高級フレンチ「Jean-Georges」本店で日本人初のスー・シェフに就任。帰国後、「Jean-Georges Tokyo」シェフ・ド・キュイジーヌに就任。2015年、新時代の若き才能を発掘する日本最大級の料理人コンペティション・RED U-35ではゴールドエッグを受賞。2018年秋、青山一丁目に自らプロデュースしたグリルレストラン「The Burn」をオープン、料理長として腕を振るう。2022年に独立し、初のオーナーレストラン「No Code」を西麻布に開業。料理人としての活動にとどまらず、食育から商品開発まで幅広く活動を行っている。著書に『ヴィーガン・レシピ』(柴田書店)がある。

 

モデレーター:緑泉寺住職 青江覚峰氏 プロフィール

 

1977年東京生まれ。浄土真宗東本願寺派湯島山緑泉寺住職。米国カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。「暗闇ご飯」主宰。超宗派の僧侶によるウェブサイト「彼岸寺」創設メンバー。著書に『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ほとけごはん』(中公新書ラクレ)、『お寺のおいしい精進ごはん』(宝島社)など。海外での精進料理公演などの実績も多く、国内外のテレビラジオ、Webなどで引っ張りだこの日本精進料理界の若手僧侶。

 

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